遺言書通りに財産を分けなくてもいいですか?:相続はつらいよ【第1章】相続のルールはつらいよ(その2・全5話)

WT税理士法人_悠々相続_相続はつらいよ_遺言書通りに財産を分けなくても-いいですか

「父が残した遺言書に納得できません。遺言書通りに遺産分けしなくてもいいですか?」
 ――せっかく書いた遺言書が否定されるなんて悲しい話ですが、こういう相談を受けることもあります。

前項で説明した通り、財産を分ける方法は2種類あります。財産をあげる人が生前に遺言書を使って指定する「指定相続」と、法律で定めた「法定相続」に則って財産をもらう側の法定相続人が決める方法です。
「指定相続」は「法定相続」より優先されます。もともと財産は亡くなった人のものですから、持ち主の作った遺言書があったら、基本的にはその通りに分けなさい!ということです。

でも、なかには本項冒頭のように「遺言書通りの分け方には納得できない!」という方もいるでしょう。その場合、相続人全員が遺言書以外の分け方を希望した場合、遺言書通りに分けなくてもいいという決まりがあります。しかし、相続人のうち1人でも「遺言書通りに分けたい」と言えば、遺言書が優先されます。

では仮に、遺言書通りに分けない、もしくは遺言書がないので「法定相続」することになった場合はどうすればいいのでしょうか。
その場合は、相続人全員で話し合い、財産の分け方を決めることになります。しかし、「自由に話し合いで決めていい」なんて言われても困る人もいるでしょう。

仮に子どもがいない方の場合を想像してみてください。
ご主人が亡くなったとして、ご主人の財産を、残された奥さんが義理の親や兄弟姉妹と「自由に分け合いなさい」なんて言われても、どうすればいいのかわかりませんよね。そこで、どう分ければいいのかの目安、「法定相続分」というものが用意されているわけです。「法定相続分」とは財産の配分の目安で、相続人の組み合わせによって決まっています(次ページ図参照)。

ときどき「法定相続分通りに分けなくてはならない」と誤解している人がいるようですが、そんなことはありません。相続人全員の意見が一致するのであれば、相続人の中でどのように財産を分けてもかまいません。「法定相続分」はあくまでも目安です。
とはいえ、この「法定相続分」の知識はたいていの人が持っていますから、これとあまりにもかけ離れた財産の分け方は、モメごとのもとになる可能性が高いと思っておいたほうがいいでしょう。

指定相続( 遺言書) にもルールがある

「こんな遺言書作ってみたんですけど、見てもらえます?」

相談者の女性に見せてもらった遺言書には、「C子(娘)にすべての財産を相続させる」と書かれています。聞くと、彼女の子どもは、C子さん以外に息子さんがいるとのこと。娘のC子さんは自分の面倒を一生懸命みてくれるので、財産を全部渡したいというのです。

相続で財産を分ける場合、財産の持ち主が遺言書で自由に分け方を決める「指定相続」が優先であるとお話ししましが、実は「指定相続」(遺言書)でも気をつけなければいけないルールがあります。それは「遺留分」です。

仮に、奥さんや子どものいる男性がキャバクラの女の子に入れあげて、「アケミちゃんにボクの財産を全部あげる」などというバカな遺言書を書いてその通りに財産を相続させることになったとしたら、奥さんと子どもは明日からの生活に困ってしまいます。奥さんは一生アケミちゃんとバカな夫を恨み続けることになるでしょう。そんなことにならないように、法定相続人に最低限の相続分を保障するのが「遺留分」という制度です。
遺留分の割合は、相続人が父母や祖父母など直系尊属だけの場合は、法定相続分の3分の1、それ以外の場合は、法定相続分の2分の1です。兄弟姉妹には遺留分はありません。遺留分は、遺言書よりも優先されますから、遺留分を無視した遺言書を書いても思い通りにはならない可能性があるということです。ちなみに「遺留分」を主張するかどうかは個人の自由とされていますが、遺留分を主張する場合は「遺留分減げん殺さい請求」(遺留分の返還請求)をしなくてはいけません。

 話は本項冒頭の女性に戻りますが、「娘のC子に財産の全額を」なんて遺言書を見たら、息子さんはどんな気持ちになるでしょうか。遺留分を主張してC子さんと争いになるかもしれません。せっかく残した遺言書が、子どもたちの仲を悪くさせるなんてことになりかねません。家族のためにも、しこりを残さない遺言書を作成したいものです。

ちなみに、相続人全員で話し合いをして財産の分け方を決めた結果、自分の相続分が遺留分よりも少なかった! とご相談に来る方がいらっしゃいますが、これは残念ながら手の打ちようがありません。
相続人同士の話し合いで決めた相続分には、遺留分の概念はありません。遺留分とは、遺言書や生前に行った贈与が相続人の権利を侵害した場合に主張できる権利なのです。

まとめ