家族信託

 最近、よく雑誌などに取り上げられる「家族信託」。「家族信託」は、新しい相続対策として、相続関係の仕事をしている司法書士や税理士、保険会社などの金融機関の関心が高まってきています。
 一方、まだまだ一般の方の認知度は低く、仮に雑誌などで知って興味を持ってもどこに相談に行ったらよいのかわからないという話をよく聞きます。しかし、「家族信託」に詳しい専門家もまだ少ないため、どこででも聞けるわけではありません。ここでは、今までの相続対策とどこが違うのか、どんな方に使えるのかを簡単にご紹介させていただきます。

そもそも「家族信託」ってなに?

 家族信託とは、「新しい財産管理の手法」です。どんな方法かといいますと「信頼できる家族に財産を任せて管理・承継する」という手法です。
この新しい手法を使うと今までは相続対策でできなかったことが実現できるようになりました。

たとえば…
  1. 親の判断能力が衰えた後は、財産管理にかなり制限があったものを、家族信託により柔軟に管理処分できるようになりました。
  2. 財産について自分の相続の時はもちろん、その後の相続でも誰を承継者にするかを指定できるようになりました。

これによりどのような相続対策ができるようになったのかは、下記をご覧ください。

1. 認知症対策ができるようになりました

 今までは、認知症対策といえば成年後見制度を利用するしか方法がありませんでした。この成年後見制度は、本人が不利益になるようなことができないという制約があるため、本人の財産を減らすような相続対策の生前贈与や保有不動産の活用などを行うことができません。
 一方、家族信託は信頼する家族に財産の管理を任せてしまいますので、任された家族が柔軟に資産を活用できるようになりま。

たとえば…

Aさん(80歳)自宅の他にアパートを所有 
息子のBさんに自宅とアパートの管理を、家族信託を利用して任せると・・・

▼▼▼ Aさんが認知症などで判断能力がなくなった後 ▼▼▼

施設に入って、空き家になった自宅を息子のBさんが適正な時期に適正価格で売却ができる。
アパートが老朽化した場合にも、息子のBさんの判断で建替えや売却ができる。

2.自分が亡くなった後も、妻の生涯の生活をサポートできる

家族信託は、自分が亡くなった後も自分が遺した財産の管理が引き続き指定できます。合わせて、遺した財産を誰が次に承継するかも指定できます。

たとえば…

Aさん(81歳) 自宅とアパートを所有 
奥様Cさんには生涯心配なく生活してほしいと息子のBさんに家族信託を利用して任せると・・・

▼▼▼ Aさんが亡くなった後 ▼▼▼

息子のBさんが自宅とアパートを相続した後も、奥様Cさんが亡くなるまで自宅は奥様Cさんが所有し、奥様Cさんが亡くなった後息子のBさんが相続するようにできる。
アパートは、息子のBさんの所有とするが、家賃は奥様Cさんが受け取れるようにできる

3.不動産の共有トラブルを解決できる

家族信託を利用することで、不動産などの共有トラブルを解決できるようになります。

たとえば…

亡くなったAさんのマンションを、長男Bさん(78歳)と長女Cさん(75歳)が共有で相続していました。
長男B夫婦には息子Dさんがいますが、長女Cさんは独身。

▼▼▼ Aさんが亡くなった後 ▼▼▼

長女Cさんは、家族信託を利用して生存中は家賃収入を受け取りながら、マンションの修繕などの管理を長男Bさんに任せ、亡くなった後は長男Bさんが相続するということができます

家族信託の注意点

家族信託は、相続直前までの財産管理、相続発生後の承継方法まで解決するため、相続にまつわるいろいろなケースに合わせて対策できるという点では、とても優れています。

 ただし、いろいろなことが出来るからこそ家族がもめそうな事案に、他の相続人に相談抜きで勝手に一人の相続人に財産を任せると、ますます紛争を激化させる可能性を含んでいます。相続人全員の了解がとれないような事案では、家族信託は慎重に取り扱う必要があります。

 また、家族信託が普及されて長くないため、紛争に対する判例などが少ないという問題もあります。税務も法務も、解釈がまだ完全には確定しているとは言えないため、予測しているものと異なる解釈が将来される可能性がありますので十分に気を付けて利用してください。